死後の世界の川

プロローグ

この間、学校で教員をされていた方から、こんな話を聞きました。

教え子がバイクの事故で大怪我を負ったそうなのですが、その生徒が退院してから学校にやってきて、こんな話を聞かせてくれたそうです。

川の向こうで死んだおじいちゃんが呼んでいて、行こうとしたら、こちら側から呼び止められて、気がついたら、病室だった、と。

その方は、「まさか嘘も言わないだろうし、三途の川ってあるのかなぁって思った」と仰ってました。

臨死体験したときに、川が出てくるという話は、よく聞きます。
ただ、日本では川が出てくるのですが、アメリカでは、川ではなく、光を見る経験が多いとかで、生まれ育った文化によって臨死体験の内容も変わってくる、という話を昔読んだ記憶があります。たぶん、立花隆氏の『臨死体験』だったと思います。(今探してみたのですが、どこに行ったのか見当たりません。)

なので、「三途の川」っていうのは、日本独特の死後観なのかなって思っていたのですが、その後、県立図書館で田中治郎氏の『世界の地獄と極楽がわかる本』を借りて読んでみたら、死後の世界に川が出てくる話は、わりと世界にあることが分かりました。せっかくなので、いくつか紹介してみます。

世界にある「死後の世界の川」

1.古代ギリシャ・ローマ

ギリシャ神話によると、地下には冥界を7巻きするステュクス(憎悪)河があり、その支流アケローン(悲嘆)川が冥界の入り口にあるそうです。
その川には、カローンという老人の渡し守がいて、お金を取って死者の魂を冥界へ渡していました。そのためギリシャでは葬儀のとき、死者の口に1オボロスの硬貨を入れたそうです。日本の六文銭みたいなものですね。
ちなみに、川を越えたところでは、三つの頭を持つ冥府の番犬ケルベロスが、地獄の入り口の番をしています。

2.古代エジプト

冥府の神オシリスの楽園であるイアルの野へ向かおうとする死者は、『死者の書』の呪文によって敵と戦いながら、太陽神ラーの船が待つ川に至ります。天空ヌトにあるナイル川です(現世と同じように、天空にもナイル川があると考えられていました)。
死者を乗せた船は、東から昇って、夜には川の西に着きます。天の渡し守は、アジェンとマハーフです。彼らの顔は後ろ向きについているそうです。
その後、死者たちはオシリスの審判を受けます。

3.ゾロアスター教

ペルシア(イラン)に発するゾロアスター教の聖典『アヴェスタ』によると、死者は「チンワト橋」を渡らせられます。橋の向こう側には天国が、下には地獄の深淵が広がっていて、善人が橋を渡るときには、橋の幅が広くなり、楽々と天国へ渡ることができるのですが、悪人が渡るときには、橋は髪の毛のように細くなって、死者たちは地獄へ落下してしまいます。
ちなみに、この橋は、両目の上に斑のある「四つ目」という犬に守られているそうです。ケルベロスのようですね。

4.古代インド

地獄の入り口にはヴァイタラニー川が流れていて、その流れは急で、汚臭に満ちているそうです。そこには、カミソリのように狭い橋が架かっているといわれます。

5.北欧神話

ヨル川という川があり、きらきら輝く金を敷き詰めた橋が架かっています。モットグッドという少女が橋番をしているそうです。

6.ゲルマン人

ギョル川の橋を渡って、死の女神ヘルの国へ行くと言われています。

7.ペルーのインカ族

死者は、髪の毛で作られた橋を渡って、湖の向こうの沈黙者たちの家へ行くと言い伝えられています。

8.まとめ

以上、田中治郎氏の『世界の地獄と極楽がわかる本』をもとに、いろいろ見てきました。
このように、死後の世界に川や橋があるという伝承は、日本だけでなく、世界のあちこちにあるみたいですね。

地獄と極楽

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